
甲状腺・副甲状腺や副腎などの内分泌疾患の外科診療を行います。
外来診療について
セントラル総合クリニック 外来診療担当医師
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午前 |
原尚人
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午後 |
原尚人
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■は予約患者様優先で診察(当日受付も診察します)
スタッフ紹介
常勤医師
役職 |
副院長・乳腺甲状腺内分泌センター長 |
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専門分野認定医等 |
医学博士 |
甲状腺内分泌外科外来のご紹介
甲状腺、副甲状腺、副腎などのホルモンを作る臓器に発生する腫瘍、またホルモン過剰・低下症の診断と治療を行う外来です。「内分泌外科」は聞き慣れない名前かもしれませんが、海外ではEndocrine Surgeryとして確立されています。頻度が高い疾患ではありませんが、故に専門性が高く、大学病院で高度な医療を提供してきた経験を生かし、患者さんに安全な医療を提供できるように心がけています。
甲状腺とは
甲状腺はくびの前方で甲状軟骨の隆起した部分(のどぼとけ)の下にあり、ちょうど蝶が羽を広げたような形で気管を抱き込むようについています。
人の体ではさまざまな種類のホルモンが作られています。ホルモンというのは、「体内でつくられ、血液中に流れて、細胞や器官の活動を調節する、ごく微量な生理的化学物質」のことです。女性ホルモンや男性ホルモン、成長ホルモンのようなものの他にも、アドレナリンやステロイド、インスリンもホルモンの一種で、現在では100種類以上のホルモンが知られています。
ホルモンを作る臓器を内分泌器官といいますが、甲状腺は内分泌器官のひとつであり、食物(おもに海藻)に含まれているヨウ素を材料にして甲状腺ホルモンを作る機能を持っています。

食物として摂取された蛋白質、脂肪、炭水化物は代謝され、体の組織を作る材料や体を動かすエネルギー源として利用されます。甲状腺ホルモンにはこのような新陳代謝の過程を刺激し促進する作用があります。また、脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保っています。胎児の発育や子どもの成長、大人の脳の働きを維持するのにも欠かせません。
甲状腺ホルモンには、4つのヨウ素を持つサイロキシン(T4)と、3つのヨウ素を持つトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。
甲状腺ではおもにT4が合成されますが、肝臓などでT4がT3に変換されることによってホルモンとしての働きを発揮するようになります。
T4、T3の大部分は血中の蛋白質と結合しています。実際に身体で働いているホルモンは、蛋白質と結合していない遊離T4(Free T4=FT4)、遊離T3 (Free T3=FT3)であり、採血ではこちらを確認しています。
甲状腺腫瘍
甲状腺の腫瘍の大部分は「良性」です。甲状腺がんは全てのがんの約1%程度です。男女比をみると1:3と女性に多く(全国がん罹患データによる)、ほかのがんに比べ進行が遅く、多くは治りやすいことが大きな特徴です。
甲状腺がんには、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、髄様がん、未分化がん、があります。それぞれの頻度は、乳頭がんが圧倒的に多く92.5%、濾胞がん4.8%、髄様がん1.3%、未分化がん1.4%と報告されています(甲状腺外科学会全国集計)
乳頭癌
甲状腺がんの9割以上を占めるのが「乳頭がん」という、進行が遅くおとなしいがんです。比較的早い時期から甲状腺周囲のリンパ節に転移することが知られていますが、仮にリンパ節転移を認めても、生命予後は良好であることがほとんどです。超音波、細胞診による正診率が高いです。
1cm以下の経過観察も可能な超低リスク乳頭癌には、手術または経過観察の選択を患者さんと相談し、決定しています。再発リスクの低い症例では甲状腺片葉切除に留めてなるべく甲状腺の機能を温存する手術を提案しています。
濾胞癌
甲状腺がんの5%ほどを占めています。このがんも生命予後は良好ですが、リンパ節転移は少ないものの、血行性に肺や骨に転移を来すことがあります。細胞の形状だけでは、良性の濾胞腺腫と区別することが難しいです。浸潤形式により微小浸潤型と広範浸潤型に分類されます。微小浸潤型は手術のみで治癒しますが、広範浸潤型では甲状腺全摘術と後述の放射線ヨウ素内用療法が必要となります。
髄様癌
乳頭がんや濾胞がんのように、甲状腺ホルモンを作り出す濾胞細胞からできるがんではなく、カルシトニンという血液中のカルシウムを下げるホルモンを作り出す傍濾胞細胞(C細胞)から発生するがんです。遺伝子異常を伴うタイプ(遺伝性、家族性)伴わないタイプ(散発性)があります。約40%は遺伝性で、常染色体優性遺伝の遺伝形式を示します。RET遺伝子の生殖細胞系列に変異を認め、副腎褐色細胞腫という高血圧の原因となる腫瘍や原発性副甲状腺機能亢進症を伴う、多発性内分泌腫瘍症(MEN)2A型、また副腎褐色細胞腫に加えて粘膜下神経腫、マルファン様体型等を伴う、MEN2B型に分類されます。
髄様癌と診断された場合には、RET遺伝子検査を行い、遺伝性か散発性かの鑑別を行います。RET遺伝子変異の部位と臨床病型、悪性度との間には関連性があります。遺伝子異常の有無によって治療方針は異なり、また、遺伝子異常を伴う場合には、血縁者(両親、兄弟姉妹、子供)のスクリーニング検査が推奨されます。
遺伝性で副腎褐色細胞腫を合併している場合は、その治療を先行したうえで、甲状腺全摘術を行います。散発性では、甲状腺片葉切除に留めて甲状腺を温存する手術も可能です。
手術後は、リンパ節転移が重要な予後因子であり、縦隔リンパ節や肝臓に再発することがあります。CEAという腫瘍マーカー、カルシトニンというホルモンが術後の再発マーカーとして有用であり、外来で慎重に経過観察していくことになります。
未分化癌
高齢者に多くみられ、急激に進行します。乳頭癌や濾胞癌が未分化転化して生じることも多く、それらの癌の既往や長期に渡り放置されていた甲状腺のしこりが病歴に挙げられます。非常に悪性度が高く、予後不良です。腫瘍の広がり(ステージング)と全身状態、予後不良因子(高齢、急性増悪症状、血中の白血球数の上昇、腫瘍の大きさ)等を考慮して、治療方針を決定していきます。
副甲状腺とは
副甲状腺は、甲状腺の裏側にある米粒くらいの大きさの臓器です。
「副」甲状腺といいますが、甲状腺とは別の臓器であり、「上皮小体」とも呼ばれています。通常、甲状腺の裏に左右上下一つずつ、合計4個あります。副甲状腺の数や位置は個人差があり、副甲状腺が5つ以上の場合、または3つしかないこともあります。通常の副甲状腺は小さいため頸部の超音波検査で確認することは困難です。
副甲状腺は、副甲状腺ホルモンを分泌しています。副甲状腺ホルモンの主な働きは、血液中のカルシウム濃度の調整です。カルシウムは骨の材料であるだけでなく、心臓も含め全身の筋肉を収縮させたり、血液を固まらせたりするのにも欠かせません。さらに、脳細胞が働く上でもなくてはならないミネラルです。
カルシウムの貯蔵場所は骨ですが、副甲状腺ホルモンはビタミンDとともに、カルシウムを骨から血液中に送り出したり、腎臓や腸から吸収したりして、血液中のカルシウム濃度を上昇させる働きをします。
一般的に血液中のカルシウムの濃度は、8.8~10.1mg/dlの間に調節されています(検査施設によって数値は若干の違いがあります)。私たちの身体にはカルシウム感知受容体があり、血液中のカルシウム濃度が下がるとこれを上げるために副甲状腺ホルモンの分泌が刺激されて、骨からカルシウムが溶け出します。逆に血液中のカルシウム濃度が高すぎると、副甲状腺ホルモンの分泌が減り、濃度を下げようとします。このようにして、血液中のカルシウム濃度は一定に保たれます。
副甲状腺腫瘍
原発性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺ホルモンの病的な過剰分泌によって、血液中のカルシウム濃度が上昇し、尿路結石、骨粗しょう症や高カルシウム血症によるさまざまな症状を引き起こします。
約4,000~5,000人に1人の割合で発見される病気ですが、多くは良性で、がんの割合は約1~5%であり、がんが原因となることはごくまれといえます。
副甲状腺機能亢進症は、腎不全など副甲状腺以外の原因で起こることがありますが、副甲状腺そのものに原因がある場合を「原発性」副甲状腺機能亢進症、その他を「二次性(続発性)」副甲状腺機能亢進症と呼び、区別しています。
二次性副甲状腺機能亢進症
副甲状腺そのものではなく、くる病やビタミンD欠乏症、慢性腎不全などの副甲状腺以外の病気が原因で副甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、その結果、骨からカルシウムが失われる病気を、二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症といいます。
二次性副甲状腺機能亢進症の原因として最も多いのは、慢性腎臓病(CKD)です。CKDの進行に伴ってリンの排泄が低下すると、ビタミンD活性化障害に伴って血中カルシウム濃度が低下します。すると前述のように副甲状腺ホルモンの分泌が過剰になってしまい、骨吸収が促進されるため骨痛や関節痛、はては骨粗鬆症による骨折を引き起こします。また骨から溶け出したカルシウムとリンが全身の心血管系に蓄積して石灰化することで、動脈硬化などの心血管系障害の発症リスクが高まることが知られています。これをCKD-MBDと呼びます。Chronic Kidney Disease(CKD:慢性腎臓病)に伴って起こるMineral & Bone Disorder(MBD : 骨ミネラル代謝異常)を表した用語です。腎臓病の患者さん(特に透析患者さん)においては、骨や関節の病気が頻繁に起こり、患者さんの生活の質をずっと下げ続けてきました。
CKD-MBDの病態解明に伴い、現在二次性副甲状腺機能亢進症はカルシミメティクスという薬剤を用いた内科的治療が中心となっています。
カルシミメティクスとは、カルシウム感知受容体(CaSR)に作用し、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑制する薬剤のことです。具体的には、血清カルシウム濃度が低い場合でも、PTHの分泌が抑制される効果があります。
カルシミメティクスにはシナカルセト(レグパラ)、エボカルセド(オルケディア)、エテルカルセチド(パーサビブ)、ウパシカルセチド(ウパシタ)がありますが、エテルカルセチドとウパシカルセチドは透析終了時に透析回路より投与される注射製剤です。この2剤は一般的に水分摂取が制限され、かつリン吸着剤などの経口製剤の併用が多い透析患者さんのコンプライアンス向上や服薬負担の軽減に役立ちます。
しかし、手術療法はQOL、生命予後、医療経済性において薬物療法を上回る利点のある治療法といえるでしょう。特に長期の慢性透析患者さんでは、症例に応じて適切に手術療法を選択することが重要です。
副腎とは
副腎は三角形をした形で小さめの餃子くらいの大きさで、左右の腎臓の上に乗っかるように位置します。中は薄皮饅頭のような構造で、表面の皮に相当する皮質とあんこに相当する髄質からできていて、各々から重要なホルモンを分泌しています。
副腎皮質は、コルチゾールとアルドステロンと呼ばれるホルモンを産生します。コルチゾールはストレスから体を守り、糖利用の調節、血圧を正常に保つなど必要不可欠なホルモンです。アルドステロンは塩分、カリウム、水分のバランスを保つのに重要な役割をします。また副腎皮質からは性ホルモンになる前のホルモンを少量産生します。
副腎髄質はアドレナリンとノルアドレナリンというホルモンを産生します。これらのホルモンは、心臓や血管をはじめ全身の機能が正常に働くのにいろいろ重要な役割を持っていますが、なかでも非常時に血圧を上昇させたり、心臓から血液を送り出す力を強めたり、エネルギー源としてブドウ糖を血中に増加させたりする重要な働きをします。

副腎腫瘍
副腎には腫瘍(しこり)ができることがあり、良性の場合も悪性(がん)の場合もあります。またしこりができるだけでホルモンの分泌には異常のないもの(非機能性副腎腫瘍)と、しこりからホルモンを通常より多く分泌するもの(機能性副腎腫瘍)があります。
副腎皮質に腫瘍ができるとコルチゾールを多く産生するクッシング症候群、アルドステロンを多く産生する原発性アルドステロン症といった病気になることがあります。また、髄質に腫瘍ができるとアドレナリンまたはノルアドレナリンを過剰に分泌する褐色細胞腫といった病気になります。どれも若いうちからひどい高血圧やコントロールの悪い糖尿病の原因にもなることがあります。