セントラル総合クリニック筋肉軍頭痛に関する情報を掲載しているページです。

脳神経外科

筋肉軍頭痛

はじめに

日常外来診療を行っていると、やはり頭痛、めまい、手足のしびれなどは多い病気でしょうか。中でも頭痛が一番多く人々の悩みの種となっているようです。その多くは治療可能なのですが一部は治療に難渋し我々にとっても頭痛の種となることがあります。今回はそんな頭痛を皆様と一緒に考えてみたいと思います。

頭痛の疫学

頭痛はどのくらいの頻度で発生するのか、分かっている様で実は曖昧なのです。と言うのも頭痛は症状であり単一の疾患名ではありません。ですから例えばくも膜下出血があればどんなに頭痛が激しくても原因疾患であるくも膜下出血あるいは破裂脳動脈瘤がその診断名となるでしょう。また一生に一度も頭痛を感じなかった人はいないでしょう。では何回頭痛を経験すれば頭痛持ちと言えるのでしょうか。難しい話です。頭痛の発生率は職業、生活(社会)環境、気質(ストレスへの対処の違い)等々、多くの因子の影響を受けているのです。ある報告によれば過去一年間に頭痛を経験した人は73%、また緊張型頭痛は22%、片頭痛は14~15%と考えられています。男女比では女性が2~3倍多いとされています。年代では20代から40代、つまり最も社会の現場で活躍している年代に多いのです。

頭痛の分類

一口に頭痛とは言っても中には色々な病態があるようです。約10年前に国際頭痛学会international headache society(ihs)により新しい頭痛の分類と診断基準が作られました。我々は従来のad hoc comiteeの原因重視の分類に慣れてきたのですが、新しいものは症状に重点を置き研究者間の比較研究がより容易になっております。ihs分類の特徴は、頭痛を症候学的にとらえ、すべての頭痛を網羅できる分類であること、さらにそれぞれの分類に診断基準がついていることです。
新しい頭痛の分類は表1に示すごとく13項目に大きく分類される頭痛を機能性頭痛(体質環境などを基盤とし形態の変化を伴わない)・症候性頭痛(原因が明らかでその多くは形態の変化を伴う)・神経痛(炎症などに伴う痛覚神経そのものの異常興奮)とに整理すると理解しやすいと思います。

表1. 国際頭痛学会による頭痛の分類

機能性頭痛
  1. 1. 片頭痛migraine
  2. 2. 緊張型頭痛tension-type-headache
  3. 3. 群発頭痛および慢性発作性片側頭痛
  4. 4. その他の非器質性頭痛
症候性頭痛
  1. 5. 頭部外傷による頭痛
  2. 6. 血管障害に伴う頭痛
  3. 7. 非血管性頭蓋内疾患に伴う頭痛
  4. 8. 薬物あるいは離脱に伴う頭痛
  5. 9. 頭部以外の感染症による頭痛
  6. 10. 代謝性疾患に伴う頭痛
  7. 11. 頭蓋骨・眼・鼻・副鼻腔・歯・口あるいは他の頭部・頭蓋組織に起因する頭痛あるいは顔面痛
神経痛
  1. 12. 頭部外傷による頭痛
その他
  1. 13. 頭部外傷による頭痛

しかし実際の外来診療の場では,様々なタイプの頭痛が微妙に絡み合っていることも少なくありません。精神的要素も加わると更に様相は複雑化するのです。ですからこの新しい分類にも問題点はあるのですがまずまず現在では広く応用されている考え方です。代表的なものを簡単に説明します。

片頭痛(migraine)

主には頭の片側でズキンズキンする拍動性で強く、慢性反復性で症状の極期には嘔気嘔吐を伴う頭痛を指します。片頭痛という言葉は一般化していますがそれだけに誤解も多いようです。分類では片頭痛は前兆(チカチカするものが見える等々の脳の局所神経症状)を伴うものと伴わないものがあります。これは同じくズキズキする頭痛でも前兆のあるものとは異なる病気と理解されています。これにより今まで診断に苦しんだチカチカする異常視覚(閃輝性暗点)のみの訴えでも片頭痛と診断することができるようになったのです。片頭痛はどうやら女性に多く遺伝的体質もありそうです。

緊張型頭痛(tension type headachetth)

以前に筋収縮性頭痛などとよばれ、圧迫感、頭重感を主とした頭痛群を、新しく緊張型頭痛と総称し、細分類で病態が明らかになっております。主に後頭部の圧迫感で、あまり激痛ではありません。また吐いたりすることも稀です。精神的な悩み考え事にも関係し、その意味から働き盛りの中高年の男性に多いようです。 頭は図1で示すように筋肉で覆われています。 ですからこの持続的収縮により痛みが出現することは容易に理解できるのです。

群発頭痛

季節的に押し寄せ暫く(数週間)続いてからピタリと消失するタイプです。目の裏のえぐられる様な激痛が特徴です。目鼻の充血など自律神経の症状を合併することがあります。徴候的には片頭痛に近いのですがこれは男性に多いのです。薬物抵抗性があります。

神経痛

頭部における神経痛に関わる神経には三叉神経(頭前半分)、大後頭神経(頭後半分)があります(図2)。
これはピリッ、ビリーン、ズッキーンなどと表現される種々の程度の痛みが突然、瞬間的に何度も繰り返し押し寄せてくる痛みです。ウイルス感染、疲労などが関係します。
これらの分類にうまく当てはまらないものが経験上二つあります。

慢性連日頭痛(chronic daily headache)

殆ど連日のように頭痛を訴えます。これは自分の経験ではそれ程多いものではありません。全ての治療に抵抗し、結局は慢性の薬物中毒との闘いになります。原因は良く分かっておりません。緊張型と片頭痛の中間型、うつ病、鎮痛薬の慢性中毒なども考えられております。

てんかん性頭痛(epileptic headache)

てんかん発作の一つ自律神経発作による頭痛があります。特に学童期の原因不明の頭痛には注意が必要です。不登校の隠れた原因にもなり、理解に苦しむ症状行動などを安易に精神的要素に結びつけないことがカギとなります。脳波をとれば容易に診断できるのです(図3)。

頭痛の原因 痛覚感受部位

不思議なことに体の全ての部分が痛みを感じる訳ではないのです。頭蓋内の痛覚感受部位は、太い動静脈、頭蓋底の硬膜、くも膜、そして脳神経などであり、頭蓋外では血管、筋、筋膜そして末梢神経などであります。これらが刺激されることで頭痛が生じるということになります。

原因 片頭痛 血管説(vascular theory)

頭には主な動脈として前額部の眼動脈、側頭部の中硬膜動脈浅側頭動脈、後頭部に後頭動脈があります(図4a)。 何らかの原因で血小板などからセロトニンが放出されたり神経終末から血管作動性神経ペプチドが分泌されたりして脳血管の収縮が起こりそれによる虚血のため前兆が出現する。すぐにセロトニンは代謝され血中レベルは逆に低下し血管はむしろ拡張する。血管の周囲には神経があり(図4b)これが引き伸ばされることによっていわゆるズキンズキンと表現される拍動性の痛みが生じるのです。ところがこれを放置すると拍動を超えて持続性のガンガンする痛みに変化し嘔気嘔吐をを伴うことも少なくありません。これは拡張し透過性の亢進した血管から種々の炎症惹起物質が漏出し血管周囲の三叉神経終末を逆に刺激し二次性の神経痛が発生するためと説明されています。また痛み信号は途中で嘔吐中枢自律神経などを興奮させるという訳です。新しい三叉神経血管説です(図5)。

神経説

一方神経細胞の機能的変化が頭痛の一次的原因であるという理論もあります。

緊張型頭痛

我々の頭は筋肉で覆われています(図1)。古い分類では頭頚部筋の過剰収縮による筋収縮性頭痛と呼ばれたものです。新しい分類では筋収縮のみによる頭痛に加え、中枢性因子なども関与する頭痛も含む包括的な概念となっています。原因は精神、筋、血流、そして液性因子など多様であると考えられ、原因に関しては幅を持って考えることができるようになったのです。中枢性因子の関与についてもさらに侵害刺激に対する側頭筋の反応(es2)で正常人に比べ中枢性の抑制効果(筋肉を和らげる効果)が低下しているともいわれています。これはいかにも現代文明病といいたいところですが何れの社会にも同等に存在することが証明されています。むしろ人間病と考えるべきでしょうか。

群発頭痛

以前は片頭痛の一つとして考えられてきましたが今回の分類では別のものとされています。群発頭痛は血管拡張作用を有する物質(ヒスタミン・アルコール・ニトログリセリンなど)で誘発されることから、頭部の血管が関与していると考えられています。さらに、セロトニンの関与が考えられています。さらに、随伴する症状であるhorner症候群などから、頭痛のおこっている側の内頚動脈が何らかの原因で拡張し、周囲の交感神経叢進展、圧迫しているようです。三叉神経系と群発頭痛との関連についても論じられており、片頭痛における三叉神経血管説に類似した機序が提唱されています。

分子生物学の面から頭痛においても、遺伝子異常の検索が行われてきています。片頭痛患者の多くが母系遺伝であることから、ミトコンドリアの機能異常、遺伝子異常の可能性についての研究も進められているところです。

頭痛誘発物質

頭痛を誘発する様々な物質が知られています。これには摂取すると痛くなるもの、逆に中止すると痛くなるものがあります。前者には血圧の薬、狭心症の薬、一酸化炭素,お酒などですが何れも血管を拡張させる力を持っているものです。グルタミン酸塩でも頭痛が知られ中華料理店頭痛と呼ばれることもあります。喫煙による頭痛は一酸化炭素中毒によるものです。美味しいものとしてはチョコレート頭痛もあります。皆さんとは関係ありませんが麻薬でも生じます。

我々医者を悩ませるものとしてなんと鎮痛薬の飲みすぎによる頭痛、あるいは中止によるリバウンド性頭痛があるのです。この場合うつ状態なども絡んできて薬物からいかに離脱するか大きなしかも難しい問題となるのです。

危険な頭痛

一般的に云って頭痛は良性疾患と考えて良いと思います。しかし数は少ないのですが中には生命に関係する疾患もあります。皆さんが良くご存知の『くも膜』といわれるものは動脈瘤の破裂によるくも膜下出血によって生じます。この特徴は突然バットで殴られたようだと表現される経験したことがない劇頭痛です。意識障害、麻痺は有っても無くてもよいのです。緊急受診を薦めます。突然発症するしびれ、麻痺、言語意識障害などを伴う頭痛では脳出血を疑います。痛みの程度はそれ程強くありません。ゆっくり進行する麻痺、言語障害、性格変化などを伴って徐々に悪化してくる痛みでは脳腫瘍、慢性硬膜下血腫などが考えられます。これも速やかな受診が薦められます。

治療

精密な検査を施行し原疾患があればその治療を、無い場合は薬物による対症療法となります。最近は良い薬も出現し、若い男性の群発頭痛、年寄りに多い慢性連日頭痛などを除けば治療は比較的容易です。頭痛でお悩みの方は是非最寄の医療機関をお訪ねください。

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